親権に争いがあるとどうなりますか?

 婚姻している夫婦間に、未成年の子どもがいる場合、この子どもは、両親の共同親権に服するのが通常で、夫婦二人が親権者として、子どもの権利行使の法定代理をすることになるのです。

 しかし、夫婦が離婚するとなると、夫婦は別々の世帯を築くことになりますから、子どもをいずれかの親が面倒を見ることになります。

 このため、未成年の子どものいる夫婦が、協議(話合)離婚をするには、最低限、いずれの親が子どもの親権者であるのかを定めておかなければなりません。

 実際、離婚届にも子どもの親権者を記載する欄が設けられており、未成年の子どものいる夫婦が、親権者指定欄を空欄にして離婚届を提出しても役所で受け付けてもらえません(連れ子で養子縁組していない場合など例外はありますが。)。

 

 夫婦間での話合では決着がつかなければ、家庭裁判所の離婚調停の中で、親権者をいずれにするのか話合をすることになります。

 調停委員、そして調停委員を背後で指揮する裁判官が双方の主張や子どもの現況などを踏まえて、一定の方向性を示唆してくれて、調停で、合意に至ることもあります。

 しかし、可愛いわが子のことですので、幾ら、裁判所の側からの話があっても、納得出来ない場合も十分あり、調停が不成立になることもあります。

 

 こうなると、離婚訴訟を提起し、この訴訟の中で、最終的に裁判所の判決の中で親権者を指定してもらう必要が出てきます。

 

 子どもの親権をいずれにするかは非常に難しい問題です。

 ただ、一般論的に、裁判所が重視している事情があるので、それを幾つか見てみましょう。

 

 まず、当事者の意向です。

 両親のそれぞれが、子どもの親権に対して、どのように考えているか、また、子どもを養育していくにあたり、どのような環境を与えていこうと考えているかを聞き取ることになります。

 

 親権者となる者の適格性も考えられます。

 今まで、双方がどのように子育てに関わってきたか、今後の子育ての方針などを中心に把握していきます。

 子育てをサポートしてくれる環境があるかとか、経済的な状況とかも踏まえる必要があります。

 なお、過去に、暴力を振るうことがあったとすれば、それは、マイナスの事情として働くでしょう。

 

 子どもの意向を踏まえることもあります。

 通常、10歳前後の子どもになれば、ある程度、自己表現ができるとして、意向確認がされるようです。

 また、15歳以上になると、子どもの陳述を聞かなければならなくなっています(家事審判規則第54条)。

 

 こういった事情を踏まえて裁判所が親権者を決めていきます。

 なお、私の経験上からすると、やはり、子どもが小さいうちは、母親の親権が望ましいと見られる可能性は高いですし、兄弟がいる場合は、兄弟を親ごとに分離しない傾向もあります。

 

 幼子の親権者に母親が望ましいかの点については、近年、父親も子育てに積極的に参加してきており、こういった事情の説明や立証が奏功して、父親を親権者とするケースも増えてきているようです。

 もちろん、こういったケースは、父親が熱心な反面、母親があまりにも無関心であったという過去の子育ての経緯によるところも大きいようです。

 

 そうでもない限り、結局のところ、世間一般では、母親の子育てに対する寄与度は父親に比べてかなり大きく、母親が親権者に選ばれる傾向が強いのだと思います。

 

2017年10月02日