
夫婦共通の趣味で、宝くじや競馬などのギャンブルをしているご家庭もあれば、夫婦のどちらか一方が、そういったものにコツコツ賭けているというご家庭もあるかと思います。
後者のように、一方が行っていた宝くじやギャンブルによる当選金は、ある意味、夫婦共有のものというよりも、その賭け事を行っていた者の運や努力の賜物と言えば、言えないものでもありません。
夫婦が離婚を前提に話し合いをする場合、夫婦で築き上げた資産の財産分与というものがありますが、果たして、上述のような一方の宝くじやギャンブルによる当選金まで、財産分与の対象とされてしまうのでしょうか。

宝くじに関する裁判例
宝くじの財産分与に関する裁判例として、平成29年3月2日東京高裁決定というものがあります。
その中で、裁判所は、宝くじの購入資金が夫婦の協力によって得られた収入の一部から拠出され、当選金が家族の住居費や生活費に充てられているというケースで、宝くじの当選金は、夫婦共有の財産として、財産分与の対象になると判断しています。
上述の裁判例の判断理由からすれば、宝くじの購入資金が、夫婦の協力によって得られていない財産からの拠出であれば、財産分与の対象にならない可能性が残されているとは言えそうです。
しかし、婚姻生活中の宝くじの購入資金が一方の固有財産から支出されているということを立証することは結構困難ではないかと思われます。
通常、宝くじは、街角の購入窓口で現金購入したりすることが多いと思いますが、この際の現金が、一方固有の財産なのだと区別して説明するのは事実上、不可能に近いことではないかと考えます。
これに対し、最近では、口座引落などで購入する宝くじもあります。
こういった購入の場合、引落口座が夫婦共有財産と一方の固有財産とが混在している口座であれば、やはり、当選金は夫婦共有財産とみられそうです。
ただ、これを独身時代の固有財産であると明確に区別可能な口座で引落としていた場合は、どうでしょうか。
裁判所がどのように判断するか大変興味深いところではあります。
なお、裁判所の上述の判断理由には、当選金が家族の費用に充てられていることも挙げられています。
しかし、この要件はどちらかというと付加的な理由にすぎず、こういった事情がないことで、宝くじの当選金が夫婦共有財産とならないと即断すべきではないでしょう。
馬券はどう見られるか
競馬で万馬券を当てるということもあり得ます。
実際に、一方が小遣いで万馬券を引き当て、その万馬券の換金額で自宅を購入した場合、その購入した自宅が財産分与の対象となるかで争われた事例があります。
奈良家庭裁判所平成13年7月24日審判は、万馬券が夫婦の婚姻中に的中したもので、購入に充てられた小遣いは夫婦共有の財産の一部とみられること、換金額で購入した自宅は夫婦が共同で居住するためのもので、12年もの間、夫婦の生活の本拠としていることを理由に、万馬券の換金額により購入した自宅は、夫婦共有財産であるとしました。
この判断理由で見られるのも、宝くじ同様、夫婦共有財産といえるもの(小遣い)から馬券が購入されていることや、換金額の実際の使途が夫婦共有の財産として用いられていることです。
馬券の事例と宝くじの事例は、裁判所の判断を行った年が平成13年と平成29年であり、16年近くの年数が開いてますが、実質的な判断基準は同じだと見てよいと思います。
財産分与は2分の1か
宝くじの当選金や競馬の換金額が財産分与の対象であるとしても、その分け方はどうでしょうか。
財産分与の分け方について、その財産を築き上げるにあたってのそれぞれの寄与を考慮しますが、一般的には、2分の1ずつに分けることが多いです。
上述した宝くじの事例では、宝くじを買っていた者が6割、その相手方を4割としています。
また、競馬の事例では、馬券を買っていた者が3分の2、その相手方を3分の1としました。
射幸性が高く、運任せの要素もありますが、宝くじも馬券も買わないと当たらないものですから、その懲りない努力に免じて(裁判所がこう言ったわけではありませんが・・・。)、購入した者の財産分与の割合を高くしているものと言えます。
ただ、数字の羅列に対して、ランダムに当選者を出している宝くじに比較し、馬の能力や馬場の状況などを判断するといった戦略的要素を含む競馬(ただし、この戦略的要素を極めても、必中するというわけでないのは、皆様もご存じのとおりです。)については、裁判所も、購入者の寄与度を大きく見る傾向があるのかもしれません。
※離婚の財産分与をめぐる法律問題に関する別のブログは次のとおりとなります。
併せて、ご閲覧下さい。