前回、「個人の自己破産でよくある質問 5選」という表題でブログを掲載しましたが、やはり、自己破産は個人の皆さんの関心が高いということのようでした。
そこで、今回は、続5選として、引き続き、弁護士が相談でよく尋ねられる質問と回答を紹介してみたいと思います。
①学資保険は子どもの財産じゃないの?
お子さんのために、学資保険に入っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
自己破産の相談に来られる方に、弁護士は、その方が加入している保険の話を聞くことがあります。
保険などで掛け捨てのものはいいのですが、当初一括支払額のものや積立型のものは、破産者の財産とみなされ、自己破産手続で注意を要するからです。
生命保険とか火災保険などと異なり、相談者の方が意外と頭から除外してしまいがちなのが学資保険です。
学資保険は、お子さんのために積立しているものなので、自分の財産ではなく、お子さんの財産であると勘違いしていることが主な理由です。
しかし、学資保険は、親が保険契約者となり、積立を行っている保険ですから、その保険に関する解約返戻金(現時点で解約したら保険会社から返還してもらえる財産額)は親の財産であるとして、自己破産手続上、破産者の財産として扱われてしまいます。
なお、破産者の財産であるとしても、同時廃止手続では、加入している保険全体の解約返戻金総額が20万円以下であれば、手元に残すことが可能です。
また、それ以上の額であっても、管財手続を取る中で、自由財産として手元に残しておくことが可能な場合があります。
そういった目途をつける上でも、弁護士には、加入している学資保険も含めて、漏れなく申告頂けると、助かります。

②自動車って手元に置いておけるの?
自己破産される方の中には、自分の名義で自動車を保有している方もいらっしゃるかと思います。
もちろん、自動車も一つの財産とみなされますので、自己破産手続では、注意が必要です。
裁判所の自己破産手続において、自動車の評価額が20万円以下、又は、国産普通車で新車販売から7年以上のものについては、資産価値がないとみなされ、手元に残しておくことができるとされており、同時廃止手続で処理されることになります。
自動車の評価については、レッドブックというものがあり、これを基に、保有する自動車の現在価値が20万円以下であるか否かを説明する手法のほか、中古自動車取扱業者に簡易査定を作成してもらい、これを示して説明する方法もあります。
価値が低いとしても、自動車を手元に残せない場合もあります。
自動車ローンを組んでいて、債務整理に入るとローン会社が自動車を引き揚げる場合です。
ローン会社は、所有権留保という担保を取っている自動車を引き揚げ、その換価価値で債務の優先的弁済を図るからです。
ローンの組んである自動車をどうしても使いたい場合、ローン会社と交渉して、親族などの第三者が自動車とローンを引き継ぐという処理をすることもありますが、それも債務の具体的内容やローン会社の対応次第のところがあります。
③財産の名義を配偶者に変えてもいいですか?
自己破産は、破産をされる方の財産を対象とするもので、家族が連帯保証などをしていなければ、その他の家族に類が及ぶものではありません。
これを捉えて、破産の相談をされる方の中には、破産手続を取る前に、不動産や保険などの名義、預貯金を配偶者や別の家族に移せばいいのではないかと安易に考え、質問される方もあります。
しかし、当然ながら、これは問題のある行動であり、弁護士としては、そのようなことをやっていいとは言えません。
自己破産は、自己破産申立をした後に裁判所が出す破産手続開始決定時点の破産者の財産を基準とするものですが、それに遡る破産者の支払不能又は支払停止時の財産も検討の対象になるものです。
そうでなければ、自己破産申立の時期をずらし、破産者は自由に財産を処分するというズルが出来ることになってしまいます。
したがって、自己破産手続申立前に第三者に財産が移転しているようであれば、これらの行為が否認されて、受け取った当事者は、財産の名義を戻すことや受け取った財産評価額相当の返還を破産管財人から求められることを覚悟しなければなりません。
破産者自身も、財産を不当に処分したということで、自己破産手続の最終目的である免責(借金をゼロにする裁判所の決定)を得られなくなるおそれが高くなります。
自己破産の相談をされる際には、財産隠し、財産処分・名義の移転などされることなく、相談に臨んで頂くことが重要です。
④配偶者や子どももカードを作ったり、ローンが組めなくなったりしませんか?
自己破産をすると、いわゆるブラックリストに載ってしまいますので、金融機関やクレジットから信用がなくなります。
破産する方本人は、致し方ないのでしょうが、そのことで配偶者や子どもにまで、同じような扱いが生じるのではないかと心配される方もいらっしゃいます。
しかし、自己破産は、破産する当事者自身の問題です。
破産した当事者の経済的不信用によって、配偶者の方や、お子さん自身の経済的信用が失われるものではありません。
したがって、配偶者や子どもさんは、その方自身に問題がない限り、破産者の破産と関係なく、カードを作ったり、ローンを組んだりすることが可能です。
ただ、ローンを組んだりするにあたって、連帯保証人を求められることがあり、この連帯保証人に破産を経験した方がなろうとすると、信用情報を確認した金融機関からストップがかけられ、ローンを組めないことはあり得ます。
⑤破産すると、できなくなる仕事がありませんか?
自己破産をしたからといって、基本的に、現在就いている仕事に影響が出ることはありません。
ただし、一部の資格や職業は、自己破産手続を取ると、資格制限を受けて、その資格や職業を一定期間行うことができなくなります。
例示すると、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などの士業が挙げられます。
また、宅地建物取引主任者、貸金業者、生命保険外交員、警備員などの職業もあります。
ただ、資格制限を受けても、自己破産手続が終了して、通常、免責決定が確定した時点で、復権し、改めて、その職業に就くことが可能となります。
一時的にでも、資格制限を受けると困る場合は、自己破産でなく個人再生手続の選択を検討することになります。
※借金をめぐる法律問題に関する別のブログは次のとおりとなります。
併せて、ご閲覧下さい。
