公務員に就かれている方が、公私において、不祥事を起こすと、懲戒処分を受けることがあります。
懲戒事例で、報道等でよく見られるのは、飲酒運転、わいせつ行為、薬物利用といった私生活上の事実もあれば、公金横領、収賄、セクハラ、パワハラといった公務上の事実によることもございます。
実際、懲戒の対象とされる不祥事は枚挙に暇がありません。
また、不祥事というわけではありませんが、職務を十分に果たすことができない場合は、分限処分と言うものもあります。
一番わかりやすいのは、心身の故障などにより、公務を十分に果たせない場合でしょう。
懲戒処分の場合、その種類は、免職、停職、減給、戒告となります。
分限処分の場合は、免職、降任、休職、降給となります。
公務員が懲戒処分を受ける流れ
公務員は、所属する地方公共団体なり、国なりの定める処分手続にしたがうことになります。
地方公務員であれば、地方公務員法第29条4項に「職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。」とされています。
例えば、弊所のある大阪市では、どのような条例が定められているでしょうか。
大阪市職員基本条例によれば、第8章第27条から同31条に職員の懲戒について触れられています。
その第30条において、「懲戒処分を行うか否かの決定及びその量定の決定に当たっては大阪市人事監察委員会の意見を聴かなければならない」とあり、同人事監察委員会の意見を踏まえて任命権者(大阪市長)が懲戒処分について「その旨を記載した書面を当該職員に交付して」行うとあります。
懲戒処分の内容は、非違行為の内容も含めて公表されるとあります。
多くの地方公共団体でも、概ね同様の流れで懲戒処分がなされるかと思われます。
公務員が懲戒処分を争うには審査請求から
公務員が懲戒処分を受けてしまった場合、争う方法には段階があります。
まず、審査請求という手続を起こすことになります。
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(または処分があった日の翌日から1年以内)に、国家公務員の場合は人事院に対して(国家公務員法第90条3項及び同法第90条の2)、地方公務員の場合は、所属する地方公共団体の人事委員会又は公平委員会に対して(地方公務員法第49条の2の1項及び同条の3)、請求する必要があります。
審査請求は、行政の処分について、行政内部における第三者機関に再審査をしてもらうという不服申立手続です。
例えば、大阪市では、不利益処分の審査に関する規則というものを定めており、審査請求の申立ての具体的方法や審査手続の流れを規定しています。
申立先は、人事委員会とされています。
審査請求の手続上では、口述書という書面の提出や証人尋問の方法なども規定され、裁判所のように主張・立証ができる制度になっています。
審査請求の結論として裁決という判断が出されますが、この裁決で処分を取り消してもらえれば、それで目的は達します。
しかし、審査請求の裁決で、懲戒処分に問題なしとされた場合、なおも不服を申し立てたいなら、司法権たる裁判所に訴えを起こすことになります。
なお、懲戒処分からいきなり裁判所に訴えを起こすことはできず、まず審査請求を経なければなりませんが、これを審査請求前置主義とも呼んでいます。
審査請求の結果に不服があれば処分取消訴訟
審査請求結果に対する不服申立については、原則、裁決をした行政庁の所在地を管轄とする地方裁判所に、処分取消訴訟を申し立てることができます(行政事件訴訟法第12条1項)。
正式に裁判所の裁判官に、訴訟手続で判断をしてもらえるということになります。
注意点は、その出訴期間であり、裁決があったことを知った日から6か月(又は裁決の日から1年)以内に訴えを提起しなければなりません(同法第14条1項及び同2項)。
この訴訟では、裁判所において、当事者が主張・立証して、判決が出されることとなります。
もちろん、通常の訴訟同様、判決に対する不服については、控訴・上告を行うことができます。
本件を弁護士に依頼すると…
懲戒手続にかけられている段階では、弁護士は、懲戒に対する意見書を作成して提出したり、可能であれば、聴聞手続にご本人と同行したりして、サポートをします。
懲戒処分が出された段階では、審査請求書の作成して申立をし、代理人として対応します。
審査請求の結果が出された段階では、懲戒処分取り消しの訴状を作成し、行政訴訟を代理人として遂行することとなります。
訴訟は、尋問を行うなどの最終段階でない限り、基本的に、依頼者様が期日に出頭される必要はありません。
