教師と飲酒運転

 年末は忘年会、新年は新年会、年度前後は歓送迎会と、教員の方々も飲酒の機会があるのではないでしょうか。

 

 飲酒をしたら、自動車やバイクの運転をしてはいけないのは、教員だけに限られず、守らなければならない社会一般の当然のルールです。

 しかし、ついつい、うっかり、飲酒後、運転をしてしまうという事例が時折見受けられ、悲しいことですが、懲戒処分に至っている報道を目にします。

 

 

 飲酒運転については、私人であっても、その勤務先での処分の対象となり得る
ものですが、特に、公務員たる教員の場合、その処分は、極めて厳しいものとなります。

 

 一例として、公表されている大阪市教育委員会の「懲戒処分に関する指針」によりますと、次のとおりです。

 

・「飲酒運転については、人身事故、又は物損事故を起こした教職員は、免職とする。」
・「飲酒運転をした教職員は、免職又は停職とする。」

 
 人身事故でも、物損事故でも、事故に至れば免職、単なる飲酒運転でも、免職又は停職と非常に厳しく処分される方針です。

 東京都の教育委員会の指針も似通っており、おおむね、どこの地方自治体でも、似たり寄ったりの処分指針が示されているものかと思われます。

 

 弁護士としては、物損事故であれ、免職必至という大阪市の指針について、その結果の差異からして、いかなるものかという反骨的意識を持ちます。

 ただ、生徒児童の模範として、社会的ルールを指導する立場の公務員教師において、交通事故を起こした場合の処分が殊更厳しくなり、司法もこれを是認しがちであるのは止むを得ないところかとも考えます。

 

 飲酒運転をした教師としては、免職なのか、停職なのかが、非常に大きな一線であることは、明らかです。

 免職となれば、教師としての勤務先での就業が絶たれ、教員免許を失い、退職手当が不支給とされてしまうことが想定されるからです。

 

 この辺りについて、飲酒運転をした公務員教員が懲戒免職処分にされた後、その処分を裁判所で争い、免職の判断が裁量権を逸脱した処分であるとして、取り消された事例も見受けられるところです。

 

 免職にされてしまったとしても、事案によっては、飲酒運転に至った事情、故意の有無、悪質性、その他情状を踏まえて、裁判所で争う余地があるということです。

 

 また、仮に免職処分が有効であるとしても、退職手当の全面不支給については、裁量権の逸脱であるとされた事例もあります。

 これについては、別の稿でご案内したいと思います。

2021年07月16日