自賠責保険の支払基準は?

 交通事故の損害賠償において、支払基準が3つあると、よく言われます。

 

 一つ目が自賠責基準。

 これは、自賠責保険に保険金の支払請求を行う場合に用いられている基準です。

 

 二つ目が任意保険会社基準。

 任意保険会社が、被害者の方に支払提示する際の基準で、自動車保険会社各社ごとに内部基準があるとされています。

 

 三つ目は裁判基準。

 実際、裁判で争われた場合、裁判所が用いている基準のことを言います。

 

 今回は、自賠責保険に保険金請求を行った場合に支払される基準についてご説明します。

 自賠責保険は、支払基準が法律で定められることになっております(自賠法16条の3)。

 この支払基準については、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年 金融庁 国土交通省 告示第1号)として、詳細に記されています。

 

 本稿では、そこから掻い摘んで、主要なところを取り上げたいと思います。

 なお、本稿での説明は、あくまで自賠責支払基準となりますので、実際の損害賠償請求可能額よりも低く弾き出されてしまうことが通常です。その点、ご留意下さい。

 

 まず、傷害に関する損害部分です。上限は120万円です。

 

損害項目 内容 支払基準
治療費 応急手当費
診察料
入院料
投薬料、手術料、処置料等
柔道整復等の費用
必要かつ妥当な実費となります。
看護料   入院中
 原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合に1日につき4,100円となります。

自宅又は通院
 医師が看護の必要性を認めた場合になります(ただし、12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合は証明不要です。)。
 近親者等は、1日につき2,050円となります。

付添休業損害
 上記の付き添い者に、上記金額を超える休業損害が発生することが証明出来るようであれば、上記看護料に代わり、休業損害が認められます。
諸雑費 療養に直接必要のある諸物品の購入費又は使用料
医師の指示により摂取した栄養物の購入費
通信費等
入院中
 入院1日につき、1,100円です。
 立証資料等で上記を超えることが認められる場合は、必要かつ妥当な実費となります。

通院又は自宅療養中
 必要かつ妥当な実費となります。
文書関係費 診断書、診療報酬明細書、交通事故証明書、印鑑登録証明書、住民票等の発行に要した費用 必要かつ妥当な実費となります。
通院等
交通費
通院、転院、入院又は退院に要する交通費 必要かつ妥当な実費となります。
休業損害 休業による収入の減少があった場合又は有給休暇を使用した場合になります。

休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して治療期間の範囲内となります。
1日あたり、原則5,700円です。
ただし、家事従事者(いわゆる専業主婦等)についても、休業による収入の減少があったものとみなします。

立証により、1日あたりの損害額を超えることが明らかな場合は、上限がありますが、その実額が採用されます。
通院慰謝料 慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内となります。 1日あたり4,200円です。


 次は、後遺障害に関する損害部分です。上限は、等級に応じて設定されています。

 これについては、逸失利益と後遺障害慰謝料に分かれます。

 いずれも、細かい基準が定められていますので、詳細は、上記リンクを参照にして下さい。

 なお、後遺障害等級に対応する慰謝料支払額は、同一等級の方全て一定ですが、逸失利益は、被害者の方の事故前収入によりますので、個人差があります。

 

 

 最後に、死亡に関する損害です。上限は、3000万円です。


損害項目 支払基準
葬儀費 60万円です。
立証により、上記金額を超過することが明らかな場合、必要かつ妥当な実費で、100万円までの範囲となります。
逸失利益 後遺障害に関する支払基準同様、細かい基準が定められていますので、詳細は、上記リンクを参照にして下さい。
死亡
慰謝料
死亡者本人部分
 350万円です。

遺族部分
 慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母を含む。)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む。)とします。
 請求権者1人の場合には550万円
 2人の場合には650万円
 3人以上の場合には750万円
 なお、被害者に被扶養者がいるときは、上記金額に200万円が加算されます。
2017年09月12日