自賠責は、人損に関する強制保険
自賠責保険は、自動車の運行を行うにあたり、加入を強制されている保険です。
加入せずに、自動車を運行している場合、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罰則を科されます(自賠法86条の3第1号)。
したがって、原則、走行している自動車の保有者は自賠責保険に加入しています。
自賠責は人損のみ
自賠責は、自動車の運行により、交通事故の被害者に人損が生じた場合、この被害者の損害賠償を保障するためのものです。
人損に関するものですから、物損を保障するものではありません。
自賠責の支払上限と任意保険
自賠責保険は、このように加入が強制される強制保険ではありますが、一方で、その支払上限が低く定められています。
症状固定までの傷害に関する損害については、120万円、後遺障害が残った場合の後遺障害に関する損害については、等級に応じて、75万円~4000万円、死亡に関する損害は、3000万円です。
当然の話ですが、自賠責保険の上限が低いため、自賠責保険の保険金では全損害の賠償が出来ないことも多いです。
このため、自賠責保険で補えない不足部分については、別途、任意に自動車保険会社と契約しますが、これを任意保険と呼ぶのです。
任意保険に加入するかしないかは、自由であり、不加入の罰則はありませんが、未加入で多額の損害賠償を請求される事態を望む人はいませんので、ほとんどの方は、任意保険にも加入し、万一に備えています。
自賠責と過失割合
自賠責は、任意保険とは異なり、よほどの重過失でなければ、事故における過失割合の影響を受けることはありません。重過失の場合でも、過失割合がそのまま反映されるものではありません。
これも被害者保護に特化した強制保険ゆえの特徴でしょう。
加害者請求・被害者請求
自賠責保険の請求については、加害者請求と被害者請求があります。
加害者請求は、加害者側が被害者に対し、損害賠償を支払った場合、その支払った金額を自賠責保険に請求して支払を受けることができます。
通常は、加害者側の任意保険会社が治療費等の支払を行い、その支払分を加害者請求して自賠責保険から受領することが行われています。
一方、被害者請求は、被害者自らが損害賠償の保険金を請求し受け取ることです。
自賠責からの受領金額の控除
当たり前の理屈ですが、自賠責保険で受領した金額分(加害者請求の場合も含む)は、被害者が加害者に請求できる全損害額から控除されます。
これを法律用語では、「損益相殺」と呼び、被害者が、重複して、損害賠償を受けないように調整するためのものです。
