交通事故の被害自動車の損害は、修理することで現状に回復するとの考え方です。
このため、修理代の請求が損害賠償項目の一つとなっています。
しかし、事故に遭った自動車が修理をすることで、事故前の現状を回復し得ない場合が想定されます。
一つ目は、純粋な機能上の問題です。
幾ら修理を行っても、どうしても全ての機能が取り戻せない場合というものがあります。
この場合、通常の評価以上に、事故後の自動車の評価が低下しますから、低下した評価損分を補填する必要が出てきます。
二つ目は、外観上の問題です。
修理をしても、外観上、補修跡が残るために、自動車の価値が低下することから生じるものです。
三つ目は、取引上の問題です。
修復が出来るとしても、事故車両であるという事実から、その自動車の取引上の評価が下がる場合の評価損分です。
上記のうち、機能上の問題については、機能上の障害が残ったことやそれによる価値低下分を証明出来れば認められるのが通常です。
外観上の問題についても、同様の証明ができることが前提ですが、証明できれば、あらゆる車種において認められるものではありません。
外観の評価損について損害賠償が認められるのは、ある程度、美観が要求される用途に使用される車種に限定されると考えられるからです。
これによると工事車両とかは認められにくくなります。
最後に、取引上の問題はどうでしょうか。
これは、単に事故車両であるという事実に対する購買層の心理的事情による評価減ですから、認めるか認めないか、見解や裁判例も割れています。
しかしながら、裁判所の傾向としては、初年度登録から何年以内かとか、走行距離が何キロくらいかとかいった自動車の諸事情を加味し、判断しているようで、新車であればあるほど、認められる可能性は上がります。
この取引上の問題により生ずる評価損の金額算定も非常に難しく、最終的に、修理費の何%かを裁判所が裁量で判断していることが多いように感じます。