マンガ・小説などの原作と二次的著作

 小説やマンガである作品を映像化したドラマや映画は、よく目にすると思います。

 また、マンガ自体にそもそも原作者がおり、その原作者とある種タッグを組みながら、漫画家が絵、コマ割り、吹き出しを創作するものもよくあります。

 

 こういった、元々、原作があるものをベースにして、作品等を作る場合、原作を基にして創作された作品は、二次的著作物と呼ばれます。

 二次的著作物は、原作を基にしていることから、基にした原作の著作者の著作権が及ぶことになり、二次的著作物の制作や、制作された二次的著作物の利用については、原著作権者の許諾を得る必要があります。

 

 許諾を得ないと、原著作権者から二次的著作物の利用の差し止めや損害賠償の請求を受けることが考えられます。

 

 この二次的著作物に対する原作著作権者の権利がどこまで及ぶかについて、大変興味深い、2つの事例を紹介したいと思います。

 


キャンディ・キャンディ事件

 

 いがらしゆみこさんという方が描いた、中高年のある年代以上には、大変有名な少女漫画があるのですが、このマンガの創作にあたっては、原作原稿によるストーリーを提供する別の原作者がいました。

 そして、このマンガを世に出すにあたっては、原作者と漫画家が協力し合っているので、その創作や発表には原作者の許諾がありました。

 

 しかし、問題となったのは、世に出たマンガのコマ絵やキャラクター絵を二次的著作物の著作者である漫画家が利用するにあたって、絵自体の創作者でない原作者に許諾を得なければいけないかという点でした。

 

 著名な裁判は、事件名に通称名が付されるのですが、本件は、最高裁で判断され、冒頭の「キャンディ・キャンディ事件」と呼ばれ、著作権の判例として、よく紹介されることとなっています。

 

コマ絵やキャラクター絵は独自創作なのか?

 

 考えてみると、マンガの原作は、文字で書かれたものですし、この文字で書かれたストーリーやキャラクターの特徴を捉え、漫画家がキャラクターや場面を創作して絵柄にします。

 

 そうであるとすれば、ストーリーとは切り離して、マンガの一部分のコマ絵やキャラクターを題材にした表紙絵や原画そのものを利用することについては、絵を創作した漫画家の一存で可能であり、原著作者への許諾を求める必要がないのではとも考えられそうです。

 本件の漫画家の方も、そのように考えました。

 

 しかし、平成13年10月25日最高裁判決は、 上述のようには考えず、原著作者の著作権が及ぶとした高裁の判断を維持しました。

 

 高裁は、二次的著作物というものは、原著作者と二次的著作者の創作性のいずれが単独で発揮できるかは困難で、区別を要するとなると権利関係が不安定になるとした上、著作権法は、このような二次的著作物内での独自の創作性の区別判断を予定していないので、一部分のコマ絵でも、二次的著作物性が失われることはないとしました。

 

 また、キャラクターのラフスケッチや表紙絵などについても、それがマンガそのもののキャラクターを描いたものである以上、マンガの複製物であると言わざるをえないとして、やはり、原著作者の権利が及び、同者の許可を得る必要があるものだと判断しています。

 

 この判例には、批判も多いところですが、原作ありのマンガを制作される方は、原作者の許諾の必要性や原作者との人間関係に、よく注意される必要がありそうです。

 

 小説やマンガを原作とする映像化の問題

 

 もう一つ、二次的著作物の利用に関して興味深い事例は、小説やマンガの原作の映像化をめぐるトラブルです。

 具体的な事案に入る前に、簡単に権利関係を整理してみましょう。

 

 小説やマンガの原作を映像化することとなる場合、まず、小説などの原作を脚本家が脚本として仕上げ、その上で、脚本に基づき監督が映像を作成します。

 

 この点、原著作権者は、原著作物を翻案(脚本化・映像化)することについては、翻案権(作品を脚色や映像化などしたりできる権利)や同一性保持権(作品の内容を勝手に改変されず同一性を保たせる権利)を有しています。

 

 したがって、まず映像化にあたって作成される脚本の内容については、原著作者の許可を得なければなりませんし、この作成された脚本自体が、二次的著作物となります。

 

 また、二次的著作物である脚本を基に、映像化した作品は、脚本自体から見れば、二次的著作物ですが、原著作物から見れば、三次的な著作物であり、やはり、これについても、原著作権者の権利が及び、許諾があることが必要です。

 

原著作者を置き去りにしないこと

 

 実際、裁判で争いになったのは、NHKがある作家の小説をドラマ化することにして、脚本を作成し、クランクインまで進んだのに、作家が脚本に同意しなかったため、ドラマ化がとん挫したケースです。

 作家側は、従前から、脚本に対する異議を唱えていたということでした。

 

 この件で、かなりの段階まで準備が進んでいましたから損害も生じており、作家の窓口である講談社とドラマ化許諾の契約を結んだNHKは、講談社を相手方として損害賠償請求を提訴しました。

 しかし、東京地裁は、ドラマ化の前提となる脚本そのものが作家の許諾を得ていないものである以上、ドラマ化許諾の契約も不成立として、NHKの請求を棄却しました。

 

 その後、NHKが東京高裁に控訴し、東京高裁の勧めで、和解内容は明らかにしない約束で、和解に至ったようです。

 

 ここまでお読みの方であれば、よくわかるかと思いますが、原作を基にした二次的著作物の利用には、当然ながら、原著作者である作家の許諾が必要不可欠です。

 にも関わらず、本件では、原著作者である作家に脚本の許諾を得る努力折衝を怠り、ある意味、作家の意思を置き去りにして、なし崩し的に、ドラマ化に向けて、テレビ局が進めていったような趣があるのは、反省すべき点でしょう。

 

 また、詳細な事情は、わかりませんが、クランクインになる前に、出版社の側も、作家の意向に反したドラマ化に対し、しかるべき行動なりを取れなかったのかであろうかという疑問を感じます。

 

 テレビ局や出版社、いずれの立場にしましても、原著作者の意思を蔑ろにするべきでないという教訓を与える事案だったと思われます。

 

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2020年02月07日