「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」をご存知ですか?

 長い法律名だなと思われるかもしれませんが、近年、立法されている特別法では、得てして、このような長い名前の法律は多々あります。

 長い法律名は、通常、一般の方にわかりやすい通称名で呼ばれることが多く、表題の法律も、「リベンジポルノ防止法」と呼ばれることがあります。

 

 リベンジポルノという名前で聞けば、大抵の方は、どういった行為が法律の処罰対象となっているのかイメージしやすいのではないかと思います。

 よくあるのは、元交際相手などが、別れた腹いせに、被害者のポルノ写真をネットで掲載する事例ですはないでしょうか。

 

 ただ注意が必要なのは、この法律で、処罰の対象となる行為は、「リベンジ(復讐)」として行われるポルノ掲載に限らず、目的を問うことなく、以下に説明する行為全般を行うことが広く処罰の対象とされていることに注意が必要です。

 この点から見ると、「リベンジポルノ防止法」という通称は、一部誤解を招く表現なのかもしれません。

 

 以下で、リベンジポルノとそれに類似する行為を受けた被害者側として、加害者に対して、いかなる制裁を求めていけるのか見ていきたいと思います。

 

 

リベンジポルノ防止法の処罰対象

 

 まず、どのようなものが撮影されている画像や写真が対象になるかという点は、リベンジポルノ防止法第2条1項で詳細に定められています。

 

「この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。

 

一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう 門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん 部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」

 

 上記の画像や動画を不特定又は多数の者に閲覧出来るよう、インターネット上に掲載することが処罰の対象とされておりますが、「第三者が撮影対象者を特定することができる方法で」(同法第3条1項)とされていますので、被写体の特定ができるもの(顔などがハッキリ写っているものが典型例です。)であることが前提です。

 一般的に、被害者の顔を含めて全身を撮影したもので、ポルノと見なされるような画像や動画の多くは、この犯罪の対象となると考えてよいかと思います。

 

 ただ、被害者そのものでなく、被害者の顔写真に首から下は別の人のヌード画像を合成するいわゆるコラージュについては、その顔の人の有する姿態が撮影された画像とまでは言えないことから、この法律の対象にならないかと思われます(後述する名誉棄損等には該当する可能性があります。)。

 

 また、「任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く」とされていますので、被写体が第三者に見られるために撮影していることを理解した上で、撮影された画像や動画の場合は、処罰の対象となりません。

 よくあるのは、アダルトビデオの動画撮影やヌードモデルの写真撮影などです。

 被写体の事前同意があるから、当然と言えば当然です。


 私事性的画像記録を不特定又は多数に公表するような行為を罰する本法ですが、公表だけでなく、別の者に公表させることを目的として、上記のような画像を提供したりする行為も処罰の対象となっています。

 

 なお、被害者が捜査機関に告訴することを要件としている親告罪です(同法第3条4項)。

 被害者が告訴をしない場合は、処罰されません。

 加害者を知ってから6か月以内の告訴が必要です(刑事訴訟法第235条)。

 

リベンジポルノ防止法の罰則は

 

 インターネット上に掲載するような行為自体は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金です。

 公表させる目的での提供行為は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金となっています。

 

その他の罪名に触れる可能性も高い

 

 リベンジポルノ及びそれに類似した行為は、同法以外にも、次のような罪名に触れる可能性があります。

 

 名誉棄損罪(刑法第230条1項)

 被害者のポルノ画像を同意なく不特定又は多数に向けてネット上に掲載するのは、被害者の社会的評価を著しく低下させることにもなり得ます。

 このため、名誉棄損罪の成立が考えられます。

 なお、同法も親告罪となっておりますので、被害者の告訴が要件です。

 加害者を知ってから6か月以内の告訴が必要です(刑事訴訟法第235条)。

 

 わいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法第175条1項)

 ポルノ画像は、性器を露出させるなどわいせつに該当するものが想定されます。

 このようなわいせつ画像や動画を不特定又は多数がインターネット上で閲覧できる状況下に置くということは、わいせつ電磁的記録頒布の罪に問われることになります。

 

 児童ポルノ公然陳列罪(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条6項)

 被害者が18歳未満の児童である場合、児童のポルノ画像を不特定又は多数がインターネット上で閲覧できる状況下に置くことは、児童ポルノ公然陳列罪の罪に問われることになります。

 

 脅迫罪(刑法第222条)及び強要罪(刑法第223条)

 リベンジポルノに類する行為自体が直ちに該当するものではありませんが、このような画像等をばら撒くぞなどと言って、被害者を脅したり、交際を強要したりするのは、脅迫罪や強要罪に該当することになります。

 

 傷害罪(刑法第204条)

 リベンジポルノなどにより、被害者に精神的な病気が生じることもあります。

 この場合、精神的疾患を被害者に起こさせる故意・過失があったとして、傷害罪の罪に問われるケースもあるかもしれません。

 

削除要請

 

 以上は、刑事上の責任追及に関する記載ですが、刑事手続外では何ができるでしょうか。

 

 まず、インターネット上に掲載された画像を削除する必要があります。

 

 削除要請は、自ら行ったり、代理人弁護士を通じて行ったりする方法もありますが、一般社団法人セーファーインターネット協会というところが、無償で削除申請の対応を行っており、こちらにお願いする方も多いようです。

 

 なお、削除の手続に着手する前に、このような画像が投稿されたという客観的証拠を残しておくことが必要です。

 

民事事件としての損害賠償

 

 リベンジポルノなどの画像掲載により、被害者は、多大な精神的苦痛を負うに止まらず、経済的損失を負うこともあります。

 これらの損害を回復するために、民事的には、加害者に対し、慰謝料等の損害賠償請求を行っていくことになります。

 

 

 

2019年10月03日