勤務先でのケガには労災保険を

 勤務先の仕事の中で、ケガをすることがあったら、業務災害として、労災保険の適用を受けることはよくあることだと思います。

 また、業務中だけでなく、勤務先への通勤中において事故に遭った場合も、通勤災害として労災保険の適用をうけることができます。

 通勤中に、駅のホームで転んだり、自動車で事故に遭ったりするような事例が考えられます。

 通勤中のケガについては、労災の適用があることを知らない方も意外と多いので、勤務先に労災請求の申告をすることを忘れないようにして下さい。

 

 

労災隠しにご注意

 

 まともな会社であれば(大部分がまともな会社と思いたいのですが)、従業員から労働災害の申告があれば、労災保険の適用が受けられるように、手続を取ってくれます。

 しかし、中には、労災請求を行ってくれず、逆に労働災害を隠蔽するよう従業員に働きかけをしてくる会社というものもあるようです。

 

 なぜ、隠そうとするのかというのも、理由がいろいろあると思うのですが、労働基準監督署から調査が入ったりするのを嫌がったり、小規模のところであれば、会社自らが労災保険料の支払を行っていなかったりという事情があるでしょう。

 他にも、労基署の調査で使用者責任があるような結果となった場合、民事上の損害賠償責任を従業員から請求されることを恐れるからかもしれません。

 

 いずれの理由があるにせよ、労災保険は手厚い保護が受けられますので、被災した従業員としては、勤務先の労災隠しに屈するべきではありません。

 勤務先が労災隠しを強いようとするのであれば、自ら労基署に申請書を提出するか、民事上の損害賠償請求を見越して弁護士に委任されることも検討された方がよいかもしれません。

 

労災保険で何が受けられるか

 

 労災保険の適用をうけると、主に次のような給付を受けることが可能です。

 

・療養補償

 労働災害で生じた傷病の治療費を基本的に全額負担してもらえます。

 

・休業補償

 労働災害により休業を強いられた被災労働者に休業開始4日目から支給されます。

 計算上の給付基礎日額の60%が補償され、特別支給金として、給付基礎日額の20%が支給され、合計すると80%が補償されることになります。

 

・障害補償

 後遺障害が残った場合に、障害一時金や障害年金が支給されます。

 どのような一時金や年金が支給されるかは、障害の等級に応じて決まります。

 また、休業補償同様に、障害一時金や障害年金には、特別支給金が別途支給されます。

 

・遺族補償

 被災者が死亡した場合に、被災者と生計維持関係のある遺族に遺族一時金や遺族年金が支給されます。

 生計維持関係のある遺族がいないが、その他の遺族がいる場合に、当該遺族に支給される遺族一時金や遺族特別年金というものもあります。

 

・葬祭料

 被災者が死亡し、葬祭を執り行った遺族に対し支給されます。

 

・傷病給付

 治療に1年6か月を超える極めて重い傷病に対し、一時金や年金が支給されます。

 

・介護補償

 被災者が介護を要する場合に支給されます。

 

労災保険と民事上の責任の追及

 

 上述したとおり、労災保険は、被災者を手厚く保護するために、多くの補償をしてくれます。

 しかし、労働災害が勤務先や第三者による故意過失によるものであった場合、労働災害によって被った民事上の損害賠償責任を併存して請求することができます。

 

 民事上の損害賠償請求を行う場合、労災保険によって支給された金額は、民事上の損害賠償請求額から損益相殺されますし(ただし、特別支給の保険金は損益相殺されません。)、被災した労働者にも過失があれば、過失相殺されることもあります。

 この損益相殺と過失相殺の計算順序ですが、最高裁は、控除前相殺説を採用しており(平成元年4月11日最高裁判決)、損害額から過失相殺をした上で、受領した保険金額を控除することには注意が必要です。

 

 民事上の損害賠償請求における損害の算定額は、労災保険の支給額よりも大きいのが通常ですので、被災した労働者側の過失割合がよほど大きくなければ、損益相殺しても、請求可能額が残るものと見込まれます。

 民事上の損害賠償請求については、個人で行うことは難しいので、手前味噌で恐縮ですが、弁護士に依頼されることをおすすめします。

 

 

 

2019年06月25日