自転車での乱暴な運転が招く法的責任

 街中を歩いていると、後から真横を走り抜けたり、猛スピードで歩道を走ったりする乱暴な運転の自転車をよく見かけます。

 小さい子どもなどを連れて歩いていますと、万一接触でもすると本当に危ないなと感じる次第ですが、走っている自転車の運転手の方は、日常茶飯事の運転かのように見受けます。

 

 

自転車事故による民事上、刑事上の責任

 

 事故が起こらずに済んでいるので、大事にはならないことが多いですが、実際に、自転車が歩行者などにぶつかって怪我を負わせたり、酷い場合には、重い後遺障害や死亡に至らしめる事案も出ています。

 

 この場合、民事上、自動車での交通事故と同様の損害算定をされますので、信じられない程高額の損害賠償義務を負わされることも考えられます。

 

 また、道路交通法上、自転車は軽車両として扱われており、ひき逃げすれば、救護義務違反の罪に問われますし(道路交通法117条の5 1号。以下「道路交通法」を「法」と呼びます。)、過失によって傷害や致死に至ると、過失傷害(刑法209条)、過失致死(刑法210条)、重過失致死傷(刑法211条1項後段)といった刑事責任に問われることもあります。

 

自転車が歩道を運行できるのは例外に該当することが必要

 

 上述したとおり、自転車は、軽車両として扱われていますから、原則、歩道と車道の区別がある場合、車道を運行する義務があります(道路交通法17条1項。以下「道路交通法」を「法」と呼びます。)。

 

 歩道を自転車が運行できるのは、例外に該当しなければならず、

①普通自転車歩道通行可の標識がある場合

②13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が自転車を運行している場合

③道路状況から自動車との接触事故の危険性があるなど、普通自転車の通行の安全を確保するためにやむを得ないと認められる場合

に限られています(法63条の4 1項)。

 

歩道を運行できるとしても、徐行や一時停止を

 

 例外的に自転車が歩道を運行できるとしても、歩道は歩行者のための道ですから、当然に歩行者優先であり、自転車は車道に寄った場所を徐行し、歩行者の通行を妨げる場合は、一時停止しなければなりません(法63条の4 2項)。

 みだりにベルを鳴らすことも道路交通法に反することになります(法54条2項)。

 

 このように見てくると、歩道の真ん中を颯爽と走り抜けたり、先方を歩いている歩行者の後からベルを鳴らして、歩行者をどかすといった、日常よく見られる行為のいずれもが、道路交通法の違反であることがわかります。

 

自転車事故を起こした結果の二重被害のおそれ

 

 こういった乱暴な運転の揚句、歩行者等に接触し傷害を負わせると、上述したような責任を問われる可能性が出てきます。

 

 刑事責任は処罰を与えるもので、これは適正に罰せられればいいのですが、時に困るのは民事責任です。

 自転車については、自動車のように自賠責の制度がありませんし、危険性が周知されておらず、条例で義務化する自治体が出てきましたが、現状、任意保険(個人賠償責任保険等の自転車保険)の加入数も多くはありません。

 このため、被害者の高額な損害賠償が認められたとしても、加害者本人が保険に入っていなければ、しかるべき賠償を手にすることができなくなるという二重の被害を被害者に加えることになります。

 

子どもの自転車事故では、親権者の賠償責任に

 

 事故を起こしたのが小学生中学年くらいまでの子どもである場合、民法上、法的な責任能力がないと見られることから(民法712条)、親権者の監督責任が問われ、親権者側で十分な監督責任を尽くしていたと立証できない限り、親権者が損害賠償義務を負うこともあります(民法714条1項)。

 

 したがって、自転車を運行したり、子どもさんに自転車を使わせている立場の方は、歩道での運行は例外であることを肝に銘じ、安全運転を心がけるなり、指導なりするとともに、万一、事故を起こした場合には、被害者に補償が行えるよう、保険加入をするようにしてくださるとよいかと思います。

 

  

2018年11月15日