自らの過失割合を補てんする人身傷害保険とは?

 

 交通事故の損害賠償請求をする上で、大きな争点の一つとなるのが、過失割合です。

 請求できる損害額が、過失の割合に応じて減殺されることになりますので、自らの過失割合が大きくなればなるほど、申告な問題となります。

 

 保険会社もよく考えたもので、このような場合、被害者自らの方で人身傷害保険というものに加入していると、自らの過失割合を補てんしてもらうことができます。

 

 人身傷害保険は、一般的に、責任の確定や過失割合の決定を待たずに、各保険会社が約款に定める人身傷害損害基準に基づく損害額を保険加入している被害者にスピーディーに支払うというものです。

 

 人身傷害損害基準(支払基準)は、裁判基準より低く設定されており、また、保険金支払上限が定められていることもありますが、自らの過失割合部分も含めて支払されることになりますので、安心できる保険設計となっています。

 

人身傷害保険の受取金と加害者に対する損害賠償請求額の調整は

 

 人身傷害保険金を受け取る場合、加害者に対する損害賠償請求と人身傷害保険金の支払額との調整の問題が残ります。

 と言うのも、上述したとおり、人身傷害保険金は、過失割合の影響を受けないもので、裁判基準よりも低い基準での保険金支払設定となっているので、これだけでは、被害者の損害の補てんに不足します。

 そこで、人身傷害保険金を受け取るにしても、別途、加害者にも請求をする必要があり、この場合、被害者は加害者に幾ら請求できることになるのかが論点となっていました。

 

 調整の方法については、最高裁判決が出るまで諸説ありましたが、現在では、平成24年2月20日最高裁判決が示した「訴訟基準差額説」というものが採用されて、決着がついています。

 簡単な事例で示すと次のとおりになります。

 

 例えば、過失割合が被害者2割、加害者8割、過失割合を無視した場合の損害総額1億円、人身傷害保険の支払額5000万円としましょう。

 訴訟基準差額説は、人身傷害保険というものが被害者の過失割合に対応する損害部分に優先的に充当されるものだとしています。

 被害者の過失割合に対応した損害部分は、2000万円(=1億円×0.2)となるので、人身傷害保険金5000万円のうち2000万円が、この部分に優先的に充当されたことになります。

 残る3000万円は、人身傷害保険金を支払った保険会社が加害者に対し求償権を有するということになります。

 結果、被害者が、加害者に請求できる金額は幾らになるかというと、被害者の過失割合に対応した損害額を控除した8000万円(=1億円ー2000万円)から、人身傷害保険の保険会社が取得した求償権額3000万円を控除した「5000万円」となります。

 上記事例では、併せて1億円の支払が受けられることになります。

 

 事案や保険契約内容によりますが、加害者も自動車保険に加入していて、加害者側の支払能力に問題がなければ、結果的に、被害者は、自らの人身傷害保険と加害者の自動車保険で過失割合の影響なく全損害額を受け取ることも十分可能です。

 過失割合を視野に入れた場合、被害者にとっては、非常にありがたい保険になります。

 

 

2018年05月01日