愛犬のリードを離して損害賠償1000万円超

 

 

 飼い犬のミニチュアダックスフントが別の柴犬に反応して突然走りだした際、飼い主の手からリードが離れ、ランニング中の被害者がこのミニチュアダックスフントに気づいて転倒し、右手首を粉砕骨折するなどのけがを負ったという事案の損害賠償請求の訴訟で、大阪地裁が約1280万円の損害を認めたという報道がされています。

 リードには繋いでいたものの、急な愛犬の発進に思わずリードが手から離れてしまったもののようです。

 非常に高額な損害賠償だという印象を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、特に珍しいわけではありません。

 

 ペットが起こした事故については、民法第718条が規定しており、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」(同条1項)としています。

 

 原則、ペットの飼い主は、ペットが起こした損害を賠償しなければならないとしたものであり、例外的に、飼い主側が相当の注意を払ったことを立証できた場合にのみ、責任を免れるものとしています。

 

 「相当の注意を払った」と言えるかどうかについては、裁判例上、極めて厳しく見られているということであり、その立証が難しく、実際のところ、飼い主は、無過失責任を負わされているのに近いものと考えてよいと思います。

 

 飼い犬の散歩を友人に任せていて、これが事故を起こした場合、「占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う」(同条2項)とされていますので、その友人は、飼い主同様の責任を負わなければなりません。

 ペットの散歩や預りも、好意で気安く引き受けるわけにはいかなくなりますよね。

 

 飼い犬が第三者を噛むなどして被害を与えた場合、その損害の算定は、交通事故の損害賠償に準じて行われるものと見られます。

 すなわち、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などの損害賠償の請求を想定しなければなりません。

 被害が甚大であり、後遺症が残るようなものであればあるほど、損害額は極めて大きくなります(損害の算定方法については、関連のブログもご確認下さい。)。

 

 ペットの事故には、非常に厳しい管理責任が負わされる以上、常日頃のペットの管理のみならず、万一、ペットが被害を生じさせてしまった場合を考え、個人賠償責任保険などの加入が不可欠になってくると思われます。

 個人賠償責任保険は、一般的に安価ですし、同居の家族にも適用される内容となっていることが多いです。

 また、現在加入している何らかの保険の特約としてセットされていることもありますよ。

 

 ペットの飼育は、日常に用いていて事故を起こす可能性のある自転車と同様、保険加入の配慮が必要なところですね。

 

 

2018年03月26日