過去にさかのぼる受信料支払義務‐NHK受信料最高裁判決から

 やや時機に遅れた感がありますが、昨年の12月6日に出されたNHK受信料支払義務をめぐる最高裁判決に触れたいと思います。

 

 この件は、テレビなどの受信設備を設置した人がNHKからの受信契約の締結の申入を拒否したことから、NHKがこの人に対し受信機器を設置した時期からの未払受信料の請求をした事案です。

 

 最高裁判決では、幾つかの論点があり、要約すると、次の点でしょうか。

 

① NHKに対する受信契約締結義務は、憲法違反であるかどうか

② NHKが受信契約締結の申入をした時点で受信契約が成立するのか、そうでないとすればどの時点で受信契約が成立するのか

③ 受信契約の成立が認められた場合、受信料の支払義務はいつの受信料から生じるのか

④ 受信料の消滅時効の成立の有無

 

 最大の論点は①で、深い議論が必要なのですが、この点について最高裁は合憲としております。

 私としては、この議論は司法の場でなく、立法府(国会)で決着を図るべき問題だと考えております。

 

 ②~については、前提として次の点を押さえておかなければなりません。

 受信料の支払義務というものは、受信契約が成立してはじめて発生するものだということです。

 このため、NHKは、受信契約を締結しているユーザーに対して、受信料を請求することができますが、受信契約を結んでいない人には、支払を求めることができません。

 

 そこで、②の論点で、NHKは、当該裁判で、NHKが受信締結の申入をした時点で、ユーザーの承諾の有無を問わず、受信契約が成立すると主張しました。

 これに対し、最高裁判決は、NHKの主張を入れず、承諾をしない場合には、NHKが承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立するのだとしました。

 このため、NHKとしては、受信契約をしていない人に支払を求めるためには、必ず裁判を起こさなければならないということになってしまいました。

 

 ③の論点は、判決の確定により、受信契約の成立が認められた場合、NHKは、どの時点からの受信料を請求できるのかということになります。

 考え方としては、受信契約成立時(判決の確定時点)からというのもありますが、この論点で、最高裁は、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するのだとしました。

 テレビ等の受信機器を皆さんがご自宅に設置した、正にその時点からということになっています。

 

 ④の論点は、過去の未払受信料が消滅時効により、消滅するのかどうかです。

 NHKの受信料は、5年の消滅時効にかかるとされておりますので、受信契約成立後の未払受信料については、5年間支払が行われず、かつ、NHKが時効期間経過前までに訴訟申立等の時効中断の手続を取らなければ、消滅することになります。

 これに対し、判決の確定により受信契約が成立した場合、上記③で受信機器設置時期にさかのぼる未払受信料は、5年で区切られるのかというとそういうわけではないと判示しました。

 過去にさかのぼる未払受信料の消滅時効の期間は、判決の確定により受信契約が成立した時点から進行するとしたのです。

 このため、判決の確定により、受信契約が成立すると、受信機器の設置時期が過去何十年も前であれば、そこまでさかのぼって、NHKは未払受信料を請求できるという解釈になりました。

 

 現実的には、受信機器の設置時期がいつであるのかを立証する責任は、NHKにあり、設置時期を実際に立証するのは難しいでしょうから、長年さかのぼる受信料を請求する訴えをNHKが起こすとは考え難いです。

 しかし、何らかの事情で、受信設備の設置時期をNHKが把握しており、その立証資料が整っているという場合、裁判により、長期間、過去にさかのぼった受信料を請求されるという潜在的な不安というか、リスクは、受信契約を拒否しているユーザー側に残り続けるのでしょう。

 

 

2018年02月23日