臍帯(さいたい)血の悪用にメス

 さいたい血は、胎児と母親をつなぐへその緒や胎盤などに含まれる血液で、血液細胞の基になる幹細胞が含まれることから、白血病等の治療に利用される貴重な血液です。

 出産経験のある方であれば、出産した際に、産院から、公的なさいたい血バンクにさいたい血を寄付させて欲しいと話が出ることをおぼえているかもしれません。

 

 ところで、最近、さいたい血を保管する民間の会社から、さいたい血が流出し、無届で投与治療等が行われた問題が耳目を集めています。

 

 さいたい血については、公的なバンクと民間のバンクが存在するということで、それぞれで、保存の目的が異なります。

 公的バンクは、出産した妊婦からさいた血の無償提供を受け、これを世の中の白血病の患者などの治療に用います。

 公的バンクは、わかりやすい形で言えば、骨髄バンクや献血と同じで、自らのために利用するのでなく、他の誰かに使われることを前提としたものです。

 

 一方、民間バンクは、出産した子どもの将来のリスク(白血病等の発症)に備えて、民間のバンクと契約をして保管してもらうものです。

 万一、子どもが白血病等の病気になった場合に、その子どもに用いることを前提としています。

 このため、さいたい血の保管については、ある程度、高額な費用を支払い、保管をしてもらう契約をするのです。

 

 さいたい血ですが、白血病だけでなく、他のがんにも効くとか、アンチエイジングといった美容にいいとかいうような噂が上っており、本当に必要な治療ではなく、こういった信憑性の不確かな美容目的等で、自由診療により投与されるという事態が増えていたようです。

 

 国は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律という法律を定め、さいたい血の投与治療には、届出を義務付けることとしましたが、今回は、この届出をせずに治療を行ったとして、逮捕者が出、注目されることになりました。

 

 その後、民間のバンク会社が経営破たんして、保管したさいたい血が流出し、多額に取引されていたことや、保管を依頼していた契約者の方に、本来は販売目的であったのに、医学の発展のためと偽って、さいたい血の所有権を放棄させたなど、悪質な事実が次から次へと判明しました。

 こうなってくると、詐欺や横領の罪にもかかってくることになります。

 

 さいたい血の民間バンクへの保管は、子どものことを思う親の気持ちから生じたものですが、この期待を裏切り、騙し、営利目的に用いるなどいうのは到底許されません。

 

 さいたい血の民間バンクでの私的保存ついては、平成14年8月の時点で、日本造血細胞移植学会が声明を出し、民間バンクの保存方法の技術的問題や治療の実効性といった問題点を指摘し、注意喚起を行っていたところです。

 

 今後、さいたい血の民間保存については厳しい管理制度が敷かれると思いますが、15年以上前から問題提起されていたことが、今まで十分周知徹底されてこなかったことが残念でなりません。

 

 

2017年09月19日