車内放置による熱中症と保護責任者遺棄致死罪

 7月に入ると、暑い日が続き、連日、子どもさんや高齢者の方の熱中症に関する報道が続きます。このような中、昨日、埼玉県の障害者施設で、19歳の障害者の方を、施設側が降ろし忘れ、6時間にわたり車内に残した結果、この障害者の方が熱中症でなくなるという事件がありました。

 

 昨今では、子どもさんを車内に残したまま、パチンコやショッピングに出てしまい、取り残された乳幼児が熱中症で亡くなるという痛ましい事件も起きています。

 

 こういった事案の場合、私達、法律に携わる人間として真っ先に思い浮かべるのは、刑法218条及び219条に規定されている保護責任者遺棄致死罪です。

 保護責任者遺棄致死は、老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をせずに、死に至らしめた場合に問われる罪となります。

 

 熱中症の事例にあてはめるならば、障害者や乳幼児を保護すべき立場の者が、暑い日に車内に残したまま、特にエアコンを付けて置く等の生存に必要な保護をしないで放置し、その結果、熱中症を発症させ死亡に至らしめたということになるでしょうか。

 

 置きっ放して熱中症を発症させた事案、刑事裁判で、直ちに保護責任者遺棄致死罪との判決がなされているかと言えば、内容によっては、保護責任者遺棄致死を認めず、刑法211条に規定されている重過失致死罪が認定されていることもあります。

 重過失致死罪は、重大な過失により死に至らしめた場合の罪で、保護責任者遺棄致死罪よりは、刑罰が軽く設定されています。

 

 どうして、保護責任者遺棄致死罪が認定されないことがあるかということですが、保護する立場の者に被害者を不保護の状態にする故意がなかったとされているものもあります。

 車内に残して離れた当初の気温や天候、保護者が車からどの程度離れていた場所にいたのか、どの程度で車に戻る予定であったのか、別の保護者が確認を取ると期待するのもやむを得ないか等、事件の具体的事実を精査して、被害者の生存に必要な保護をしていないとの認識(故意)があったとまでは言えないとしていることもあります。

 

 もちろん、保護責任者遺棄致死罪とされるか、重過失致死罪とされるかは、ケースバイケースです。

 親子間で加害者・被害者の関係になりやすい事例でありますし、気温が高くなってくる時期に、自ら車外に出ることが出来ない高齢者や乳幼児の方を車内に残して長時間出かけるというのは相当危険な結果につながりうることを周知していくのが大切でしょう。

 

2017年07月14日