マンガ・小説のネタバレ、許される?

 昨今、鬼滅の刃というマンガが大ヒットしているようですね。

 映画、グッズ販売と展開して、破竹の勢いだということです。

 

 こういったマンガや小説のヒット作が出ますと、その登場人物やあらすじが気になってくる未読の方も多いのではないでしょうか。

 通常は、その小説やマンガを購入したりして、その内容を確認するものですが、ネット上では、そのキャラクター説明やあらすじをサイトに掲載して、紹介しているものも多くあるようです。

 マンガや小説を手にすることなく、その内容を把握できるので、そういったサイトを目にしてる方も多いのではないでしょうか。

 

 これらのサイト、通称、ネタバレサイトなどと呼ばれるようですが、著作者の許諾なく、ストーリー紹介などをするのは、その内容によっては、問題となる場合もあり得ます。

 

表現の自由があり、著作権法はアイデアを保護するものではない

 

 まず、ネット上をはじめとしたあらゆる表現については、個々の表現者に憲法上の「表現の自由」があることを前提としなければなりません。

 このため、ヒット作品に触れた方がその作品の紹介やその内容の感想を述べることも、表現の自由の一部として保護されなければなりません。

 

 また、著作権法が保護するのは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法第2条1項1号)であり、アイデアそのものを保護しません。

 このため、ヒット作品のストーリー展開も短く要約されてしまいますと、具体的な表現を離れてアイデアそのものとなってしまいますから、著作権の保護の対象とならなくなります。

 

 そこで、短いストーリーの要約やキャラクター紹介などが出回ることについて、著作者はそれを受け入れなければならないと言えるでしょう。

 

細かいストーリー紹介は翻案権侵害も

 

 問題は、ストーリー内容を事細かに説明するに至るものです。

 ネタバレサイトの中には、元のマンガや小説を読むのと同様に、詳しいストーリー展開を知ることができるような記述がなされたものが見受けられます。

 特に、膨大な文章量で、始まりから終わりまで逐一紹介しているものもあります。

 

 これに対しては、著作権侵害の可能性が考えられます。

 著作権法においては、元の著作物を脚色等翻案して利用することについて、著作権者の権利が及ぶとされているからです(同法第27条)。

 元の著作物の創作的表現を翻案し、第三者が二次的著作物を作成したとすれば、その二次的著作物の創作者たる第三者は、元の著作権者の許可を求めなければなりません。

 文化庁のホームページにおいても、その旨を示唆しています。

 

 この点、上述したストーリーの詳細な要約説明は、対象となった作品をある意味脚色したようなものと言えますから、その量や内容によっては、二次的著作物にあたります。

 したがって、詳細な説明を付したあらすじのネタバレというものは、著作者の許可を得なければサイトに掲載すべきではないと考えられます。

 

マンガの絵やセリフそのものの利用の問題

 

 また、ストーリーの簡単な説明や、それに基づき、ストーリーの感想を述べるようなものであっても、併せて、元のマンガの絵そのものや、文章やセリフを長々と細かく載せることも気を付けなければなりません。

 

 元のマンガの絵や文章を第三者がサイトで利用することは、著作権者の有する複製権(同法第21条)、公衆送信権、送信可能化権(同法第23条)といった権利の侵害にあたり得ます。

 もちろん、批評、論評、論文などで、引用のルールに則り、公正な慣行に基づき一部利用するようなものであれば、著作者の権利は制限されますので、こういった利用には問題はありません(同法第32条1項)。

 ただ、文章やセリフを引用に止まらないレベルでサイトなどに掲載するならば、もはや引用とは認めらなくなります。

 

著作権法に該当せず不法行為と取られる場合も

 

 ストーリーのネタバレは、場合によって、著作権の侵害と取られないとしても、民法上の不法行為に該当するとされることもあり得ます。

 

 例えば、最後に犯人が明らかになったり、大どんでん返しがあったりするのがストーリーの肝である作品について、その犯人の名前や大どんでん返しを端的に明らかにするものが考えられます。

 

 これが出版前のものであれば、こういったアイデアを広く知られることで、購買者層の多くの購買意欲が喪失することは十分あり得ます。

 この場合、どの程度の損害が生じたかの立証の問題はあるかもしれませんが、少なくとも出版を行おうとしていた著作者や出版社の法的利益の侵害をしているのは明らかなので、民法上の不法行為責任を問われることはあります。

 

 ただ、出版前に内容を知り得る者と言えば、出版に携わる関係者に限られることが多いので、むしろ営業秘密を守るという契約上の責任や不正競争防止法上の営業秘密にかかる不正行為として問われることになるのでしょう。

 

 一方、出版後となるとどうでしょうか。

 出版に伴い、作品の内容は公開されることになるので、ある程度、多くの方が目にして、公知の物となります。

 したがって、犯人や大どんでん返しといったストーリーの肝(アイデア)を広くネタバレしたとしても、上述したような責任を問うことは難しいでしょうし、仮に問えたとしても、その損害はあるのか、あったとしてどの程度かという点で、頓挫するのではないかと思われます。

 ただ、出版に携わる関係者である場合には、出版前と同様に契約上の義務責任があり得ることは別問題です。

 

著作権法の趣旨から見て

 

 著作権法は、「文化の発展に寄与すること」を、その法目的として規定されているものです(同法第1条)。

 その文化の発展を促進するための一つの方法論として、著作者に著作権という権利を付与します。

 そして、同権利の下、著作物の譲渡権や利用の許諾権から経済的利益を回収できるというインセンティブ(報償)を著作者に与えることで、更なる著作物が百花繚乱のように咲き乱れ、豊かな文化社会を創設するというシステムを採用しています。

 

 しかしながら、文化の発展を促進するという側面においては、先進の著作者らのインセンティブだけでなく、後進の潜在的著作者らの表現の自由や先進著作物への一定程度のアクセスを保障しなければなりません。

 著作者の権利のみが突出して強固となれば、その後の表現者らが過度に委縮することになり、かえって文化の発展を阻害することになりかねないからです。

 

 そこで、現在の有力な著作権法学者らは、著作者の権利と将来の表現者らの表現の自由のバランスを図りながら、著作権法の解釈や改正をしていかなければならないとしているようです。

 この点からすると、一律にネタバレを禁止としたり、マンガや小説の引用を厳しく審査し過ぎたりするものではないと思いますが、やはり、その内容・程度が大きくなれば、著作権侵害のおそれが高まると考えておくべきでしょう。

 

著作者や出版社のスタンスをよく調べるのが重要

 

 今まで、ネタバレの法律上の問題の有無を述べてきましたが、仮に何らかの侵害にあたるとしても、マンガ家、小説家、出版社といった著作権の行使をし得る側がその著作権侵害を侵害として対処するかは別問題です。

 ネット上で、一定程度のネタバレ、マンガの画像や小説の文章の抜粋を掲載されることを積極的によしとする著作者も多いかと思いますし、実際の多くはそうなのでしょう。

 

 ただ、そうであるからこそ、著作物を自己のサイトで紹介したり、利用したりする側としては、根っこのところで著作権侵害となる可能性を持っていることを念頭に、その著作者や出版社のスタンスを公式サイトなり、当該著作者らのSNSなりでよく確認した上で、その利用方法、利用範囲、ネタバレの程度を熟考すべきかと思います。

 

 それが、元の著作者の利益に還元し、新たな表現者の今後の表現をより豊かにするものとなり、文化の発展に大いに寄与するものであると、私は信じる次第です。

 

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2020年10月30日